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前橋地方裁判所 昭和48年(わ)340号 判決

本店所在地

前橋市上大島町八九番地の一

有限会社 美木屋木工製作所

右代表者代表取締役

大泉正信

本籍

前橋市城東町二丁目八番地

住居

前橋市城東町二丁目八番一五号

会社役員

大泉正信

大正一五年三月三〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官岩崎栄之出席のうえ審理を遂げ、つぎのとおり判決する。

主文

被告人大泉正信を懲役一年四月に処する。

被告会社美木屋木工製作所を罰金一、四〇〇万円に処する。

被告人大泉正信に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、前橋市上大島町八九番地の一に本店を置き、木工品の製作・販売などを目的とする資本金一二、〇〇〇、〇〇〇円の有限会社であり、被告人大泉正信は、被告会社の代表取締役社長として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人大泉正信は、被告会社の業務に関し、同会社の法人税を免れようと企て、同会社取締役として同会社の経理事務を担当している大泉節子と共謀して木工品の売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの不正の方法により、あらかじめ所得を秘匿したうえ

第一、被告会社の昭和四四年八月一日から同四五年七月三一日までの事業年度における実際の所得金額は、七〇、二七七、五七七円で、これに対する法人税額は二四、七五一、〇〇〇円であつたのに、同四五年九月三〇日、前橋市表町二丁目一六番七号所在の所轄前橋税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二六、三九五、三三七円で、これに対する法人税額が八、六三二、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて実際の法人税額と右申告税額との差額一六、一一八、六〇〇円の法人税を免れ、

第二、被告会社の昭和四五年八月一日から同四六年七月三一日までの事業年度における実際の所得金額は八三、〇九〇、八三六円で、これに対する法人税額は二九、〇二八、一〇〇円であつたのに、同四六年九月三〇日、前記所轄前橋税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が六一、一三四、一六九円で、これに対する法人税額が二〇、九六一、五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて実際の法人税額と右申告税額との差額八、〇六六、六〇〇円の法人税を免れ、

第三、被告会社の昭和四六年八月一日から同四七年七月三一日までの事業年度における実際の所得金額は八九、三六四、七二八円で、これに対する法人税額は二九、三八〇、五〇〇円であつたのに、同四七年九月三〇日、前記所轄前橋税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三八、三五九、八六〇円で、これに対する法人税額が一〇、六七八、一〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて実際の法人税額と右申告税額との差額一八、七〇二、四〇〇円の法人税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書二通

一、被告人の大蔵事務官に対する「質問てん末書」と題する供述調書九通

一、被告人作成の答申書三通

一、有限会社美木屋木工製作所の定款(写)

一、前橋地方法務局登記官作成の商業登記簿謄本

一、大泉節子の検察官に対する供述調書

一、大泉節子の大蔵事務官に対する「質問てん末書」と題する供述調書一六通

一、大泉節子作成の答申書一二通

一、大蔵事務官作成の証明書および脱税額計算書各三通

一、国税査察官作成の修正損益計算書および修正貸借対照表各三通ならびに調査所得の説明書六通

一、押収してある売上帳三冊(昭和四九年押第一五号の一ないし三)、金銭消費貸借契約書一枚(押同号の四)、棚卸表六綴(押同号の五ないし一〇)、在庫明細帳一綴(押同号の一一)、在庫表一綴(押同号の一二)および在庫関係書類一綴(押同号の一三)

(法令の適用)

被告人大泉正信の判示各所為はいずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当し、右は被告会社美木屋木工製作所につきいずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するところ、被告人大泉正信については、所定刑中いずれも懲役刑を選択するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年四月に処し、情状により同法二五条一項一号を適用して、同被告人に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとし、被告会社美木屋木工製作所についても、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により、各罪につき定められた罰金を合算した金額の範囲内で同会社を罰金一、四〇〇万円に処することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 井垣康弘)

右は謄本である。

前同日同庁

裁判所書記官 田中将一郎

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